在宅医療が必要不可欠なご家庭にとって、頼りにならない「かかりつけ医」ほど、不安なことはありません。
現に、在宅介護を始めて4年ほどかかっていた開業医は、我が家に必要な「かかりつけ医」の役割を果たしてくれなかったのでめちゃめちゃ不安でした。
そもそも、「かかりつけ医」の役割について知らなかった僕の無知さが招いた結果ですが、現在の「かかりつけ医」と比較して初めて分かることです。
今回は、このような失敗の経験から、「かかりつけ医」を探す際の選定ポイントをご紹介します。
目次
「かかりつけ医」とは?
僕は、特定の病院にかかっていることを「かかりつけ医」だと勘違いしていました。
なので、母が長年通院していた大学病院が「かかりつけ医」だと思っていたのですが、正しくは地域の診療所のお医者さんのことを指しています。
日本医師会では、「かかりつけ医」を次のように定義しています。
なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師。(日本医師会HPより)
日本医師会のホームページには、単に、病気の診療や予防するだけでなく、社会的な保健・医療・介護・福祉活動の実践など高齢化社会を支える一翼を担える能力を持つ医師とあります。
「かかりつけ医」の機能
ところで、日本医師会が提唱する「かかりつけ医」の機能についてまとめると、ざっとこんな感じです。
1.初診診療や日頃の健康管理を支援。
2.高度医療が必要な場合には、患者さんの情報を添えて適切な医療機関を紹介。
3.診療時間外も対応できるように、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制の構築。
4.日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加。
5.保健・介護・福祉関係者との連携を行う。
6.地域の高齢者が、少しでも長く地域で生活できるように在宅医療を推進する。
7.患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。
役割の大きさと、職務がこんなに多岐にわたることに正直驚きです。
「かかりつけ医」は、地域医療を支える縁の下の力持ち的な存在だと言う訳ですね。
「かかりつけ医」のメリット
母が、大腸がんによる闘病生活で苦労しているのを見て、大腸の内視鏡検査を定期的にお願いするようなって15年。
僕自身、病気の予防・早期発見することを目的に「かかりつけ医」を作って通院しています。
「かかりつけ医」を持つメリットとしては
●患者の健康状態を把握しているため、的確な治療が受けられる。
●大きな病院に比べ待ち時間が短い。
●必要に応じて、適切な専門医を紹介してくれる。
●生活習慣病など日常の健康管理に関して、食事や運動などアドバイスが受けられる
●話をしっかり聞いてくれて、気軽に相談できる。
大学病院は、たくさんの患者を診ているから診察密度が薄く感じるのでしょうか?
母がかかっていた大学病院と比べると、話をしっかり聞いてくれて満足感が全く違います。
おでこにできた脂肪腫で困っていたとき、尿路結石の時も見抜いてもらえて本当に助かりました。
紹介していただいた病院も、ちゃんと治してくれてその結果にとても満足しています。
日々の身体のメンテナンスも大切ですが、身体に異変があったとき頼りになるのも「かかりつけ医」だと実感しています。
「かかりつけ医」に求めることは寝たきりと健常者では違う
「かかりつけ医」に求めることは、母と僕とではやはり違います。
僕が感じている「かかりつけ医」のメリットだけでは、在宅介護が成立しないのです。
母のように介護度が高いと「かかりつけ医の機能」の6番目にある、在宅医療を推進する病院を探す必要があります。
「在宅医療に推進している」と、一言で言ってもなかなかイメージしにくいと思うので、現在お世話になる「かかりつけ医」で施されていることを書き出してみます。
・専門外の症状でも診てくれる
・24時間体制でサポート
・自宅でインフルエンザ予防接種が可
・減薬に取り組む
・要介護認定を申請する際に必要な「主治医意見書」や診断書を正確に作成
・ほかの在宅医療サービスと連携して中心的な存在を担ってくれる
ちなみに、これらは母が以前かかっていた「かかりつけ医」にはありませんでした。
訪問診療行っていたとしても、上記の1と2の機能しかないことも実際にあり得ます。
月1回、訪問診療に来ても、付き添いの訪問看護師にバイタルチェックだけさせて5分もかからず足早に次に行くのですから患者に対する施しもそれなりです。
介護度が高い在宅医療に必要不可欠な3つの選定ポイント
患者に対する在宅医の姿勢も大きなチェックポイントですが、上記を踏まえて「かかりつけ医」の選定のポイントは下記のように考えます。
幅広く診察できる内科医
介護度が高くなるにつれ、通院が難しくなっていきます。
骨折やストーマパウチの皮膚トラブルなど、専門分野でないと分かっていても在宅医に頼るしかないのが現実です。
今の在宅医は、母と対話をしながら褥瘡(じょくそう)や痛みがないか、身体の隅々まで変わりがないかちゃんと診てくれます。
たとえ、専門外で治療はできなくても、どうすれば良いか指示をくれるので家族としても安心です。
自宅から近い
現在、お世話になる「かかりつけ医」の診療所と訪問看護ステーションは、病院が運営する施設なので、母の緊急時はまず訪問看護ステーションに連絡することになっています。
これまでも、色々なことがありました。
便が出なく、腸閉塞の恐れがある緊急時。
オムツの交換の作業中に、点滴のコードを引っ掛けてしまって針が抜けてしまい、自分では処置できない状態になったことも。
その度に、訪問看護師に夜遅くても来ていただいています。
先日、減薬による情緒不安定になったときも、訪問看護師から連絡を受けた在宅医がすぐに駆けつけてくれて事なきを得ました。
在宅介護は、やはり緊急時のことを想定しておいた方が良いと思います。
できれば、車で20~30分くらいの場所だと安心です。
ほかの在宅医療サービスと連携して中心的な存在を担ってくれる
今の在宅医は、時間が許せばサービス担当者会議に出席してくれます。
出席できなくても、代わりの訪問看護師を立ててくれます。
在宅医が、病気の治療だけでなく介護の現場を把握しているのは非常に大きいです。
在宅介護を支えるという大きな枠組みでとらえてくれているので、ケアマネジャー・訪問看護・訪問リハビリ、元々かかっていた大学病院とも「かかりつけ医」が起点となって上手く機能しています。
もちろん、緊急時の対応もスムーズです。
病院機能を把握して使い分けることが大切/まとめ
日本医師会が提唱する「かかりつけ医」の機能、すべて実践している病院があれば言うことが無いのですが、さすがに個人の開業医がこんなに手が回るとも思えません。
もちろん、1つでも多くこれらの機能を備えている病院を探すべきですが、そもそも訪問診療を行っていない病院もあります。
まあ、開業医に上記の7つの機能を求めるのも酷な話のような気もしますが・・・
「かかりつけ医」の機能が少ないのが悪いとかではなく、利用者が病院機能をしっかり把握して使い分けることが重要になることを知ってください。
あくまでも、「かかりつけ医」を選ぶのは私たち患者です。