装具から便が漏れて、仕事中に父親からSOSの連絡が入ったことは数知れず。
下着もパジャマもウンコまみれになって、元に戻すのに1時間以上格闘した夜もあります。
僕が、母親に代わってストーマ装具に直面して10年以上経ちますが、便モレは皮膚が荒れるから便がモレ、モレるからさらに荒れやすくなるので本当に厄介です。
今でも、この負の連鎖に陥いるとおちおち生活できなくなってしまいます。
このような経験から、パウチの管理を上手に行う方法を紹介させていただきますので参考にしてみてください。
目次
ストーマの管理はパウチの弱点を把握しておくことが重要です。
便モレ対策に通じるので、パウチの弱点についてまず知っておきましょう。
パウチの弱点は、パウチと皮膚の接点となる面板(皮膚保護剤)部分です。
パウチとは、排泄物を一旦プールする袋のことで、ストーマ(人工肛門)を覆うようにして周囲の皮膚に貼り付けて使用します。
基本的には、皮膚にシールで貼り付けて留めているだけなので、水分、負荷、圧力には弱いです。
1つずつ見ると、水分は水様便のことです。
同じ水でも、汗や入浴での外側からの水は拭き取ってケアすればそれほど粘着力が弱まらないですが、内側からの水様便にはかなり弱い印象です。
特に、座り姿勢だとストーマとパウチの接続部が水様便で浸っている状態になるのでモレやすい姿勢だと言えるでしょう。
その他にも、排泄物の重みでの負荷のかけすぎや、袋にガスがたまってガスの圧力で面板が剥がれやすくなることもあります。
それでなくてもストーマ周囲の皮膚は、パウチの取外しの摩擦で皮膚トラブルを起こしやすい場所だけに、ケアしづらく治りづらいのも弱点たる所以です。
水分、負荷、圧力以外にシールの密着度を低下させる原因は?
その他にも、密着度の低下の原因はいくつか考えられますが下記の状態に当てはる方が多いと思います。
- ストーマの周囲にしわやくぼみなどの凹凸
- 面板のノリや、アダプト保護シールの残骸の付着による皮膚表面の凹凸
- 皮膚の炎症
凹凸について
凹凸は、密着度の低下を招いてしまいモレの原因になります。
僕は、母の体重減による体型の変化でパウチを貼る腹部にくぼみができたことは知っていたのですが、それが便モレの原因になっていたことに長らく気づけませんでした。
パウチを貼る皮膚表面が、フラットになっているか観察して凹凸があればその原因を取り除いてください。
皮膚の炎症について
皮膚の炎症は、ヒリヒリした痛みが伴い、面板のシールのつきも悪くしてしまいます。
炎症を治そうにも軟膏の成分には油が入っているせいか、さらに密着度の低下を招いてしまってさらに剥がれやすくなる悪循環に落ちりやすくなるので要注意です。
凹凸・皮膚炎症の原因・対策・注意点
前述のように、凹凸の原因はしわやくぼみによるもの、パウチ貼り替えの際のアダプト保護シールの残骸の付着によるものです。
母の皮膚のくぼみは、アダプト保護シールを使用してくぼみを無くすことでこの問題を解消しています。
アダプト保護シールは、皮膚のしわやくぼみを埋めて平坦にするパテのようなものです。
粘着力が強く、皮膚を保護してくれる皮膚保護材でできています。
皮膚にぴったり貼り付くので、面板下への排泄物の潜り込みを防いで天敵の水様便も食い止めてくれる優れものです。
その反面、パウチ交換の際にアダプト保護シールの残骸が皮膚にこびり付きやすいのが欠点といったところでしょうか。
残骸を少しでも残すと凹凸になるので、時間がかかってもきれいに取り除くことが取り扱うポイントになります。
皮膚炎症の原因は
意外と知られていないのが、水様便のような下痢便はアルカリ性で消化酵素が大量に含まれているということ。
この消化酵素は、皮膚を強く刺激、皮膚のバリア機能を壊し、皮膚を著しく刺激してしまいます。
皆さんにも経験あると思いますが、下痢のときお尻が痛くなるのはそのためです。
パウチから便がにじみ出ているのに、その上からテープを貼って補強しようとする人もいますが、便液が皮膚に付着したまま放置すると一発で肌がただれてしまいます。
わずかでも便液がモレたら、補強してその場しのぎをするのではなく、できるだけ早く新しいパウチに取り替えるようにしてください。
ご自身でストーマ装具の管理ができない場合
ご自身でストーマの管理ができなくなれば、家族の誰かがしなければならなくなるのですが、我が家も母親が要介護になったときこの問題に直面しています。
負荷をかけすぎないようこまめにパウチに溜まった便を出すことや、便モレしたときは速やかに貼り替える処置など、僕が会社勤めをしていたときは何かと大変でした。
父親に、便モレしたときのためにパウチの貼り方も教えたのですが、いくら教えても上手く貼れなかったこともあります。
まあ、父親が全くやる気がなかったこともありますが(-_-;)
それでも応急処置だけはさせていました。
父親に求めたのは、汚れを拭き取ってとりあえず新しいパウチを貼るだけの僕が帰宅するまでのつなぎです。
あくまで仮なので、貼り替えしなければなりません。
1.000円するパウチが1枚無駄になるだけでなく、僕が帰宅するまで母は食事ができず遅くまでよく待っていたものです。
先日、訪問看護師に聞くと、担当している患者さんの中にはストーマ装具の交換などのフォローをしている方もいるとのこと。
当時は知らなかったのですが、本当に困っていたので知っていたら訪問看護サービスで便モレのフォローをお願いしていたと思います。
介護保険を利用されている方なら、ストーマ装具の管理を訪問看護サービスに補佐してもらうのも良いかもしれませんね。
要相談になりますが、ご自身やご家族がストーマ装具に慣れるまでの期間限定で訪問看護を利用するのもアリだと思います。
おわりに
今回は、パウチの便モレの原因と対策についてでしたがいかがでしたか?
便モレを防ぐためには、面板をしっかり密着させること。
そのために、ストーマの周囲の皮膚を清潔かつ健康な状態に保つことに尽きます。
特に、「排泄物に触れて炎症を引き起こす」ことから始まる負の連鎖に陥らないように、便がモレたときは皮膚を保護するために速やかに対処することが重要です。
便モレの原因は上記だけではありませんが、これらを対策することで解消できることも多いと思います。
ストーマの管理で困ったときには、ストーマ外来やストーマ装具の販売店でも相談に乗ってくれるところもあるので問い合わせてみてください。
こういった類は、やはり専門家に聞くのが一番早いです。