母親に代わって、ストーマ装具の問題に直面して13年が経ちます。
便が漏れて、仕事中に父親からSOSの連絡が入ったことは数知れず。
下着もパジャマもウンコまみれ、元に戻すのに1時間以上格闘した夜もあります。
漏れトラブルは、便が漏れるから皮膚が荒れ、荒れるからさらに漏れやすくなるので本当に厄介です。
今でも、この負の連鎖にハマるとおちおち生活できなくなってしまいます。
このような経験から、ストーマの管理を上手に行う方法を紹介させていただきますので参考にしてみてください。
目次
まず、ストーマ装具の弱点を知っておこう
漏れトラブルを防ぐには、面板と皮膚の間に隙間ができないようにすることに尽きます。
しかし、これがなかなか難しい・・・
なぜか!?
それは、パウチの弱点が面板と皮膚の接点となる接着面だからです。
パウチとは、排泄物を一旦プールする袋のこと。
ストーマ(人工肛門)を覆うようにして、周囲の皮膚に貼り付けて使用します。
ただ、シールで貼り付けているだけなので、水分、負荷、圧力には弱いです。
水分は、ここでは水様便のことを指します。
水様便とは、水分の多い便のこと。
いわゆる下痢の状態で、母も大腸を切除しているせいか便は完全に液体です。
同じ水分でも、入浴での外側からの水は大丈夫なのですが、内側からの水様便はパウチの粘着力を急速に弱めてしまいます。
負荷と圧力については、ありがちなのが朝目覚めた際の便漏れ。
排泄とガスで、パウチが膨れ上がって圧に耐えられずに破断するケースです。
排泄物の重みが負荷となり、ガスが溜まることによって空気圧がかかるので剥がれやすくなってしまいます。
日中だと、早目に便を出して対処ができても、就寝中はそうはいかないのでお困りも方も多いかと思います。
ストーマ周囲の皮膚にも目を向けることが大切
漏れトラブルは、パウチだけでなく皮膚の状態も大きく影響を及ぼしているので注意して観察する必要があります。
下記は、パウチの密着度を低下させる原因です。
- 皮膚荒れ
皮膚がただれると、ヒリヒリした痛みが伴い、面板のシールのつきも悪くしてしまいます。
- 皮膚の脆弱化
皮膚荒れは、皮膚そのものを弱くしてしまいます。
皮膚がもろくなると、軽微な外力でも損傷しやすく皮膚の一部が剥がれてしまうこともあり密着度の低下は避けられません。
- 面板のノリ、皮膚保護シールの残骸がこびり付きやすくなる
アダプト皮膚保護シールは、皮膚のシワやくぼみを補正するために使用するリング状の皮膚保護剤です。
利点は、面板と皮膚の隙間を埋めることで排泄物の潜り込みを防ぐことができます。
欠点は、皮膚荒れするとシールの残骸がこびりついて皮膚表面に凸凹ができやすくなってしまいます。
これらの症状の、延長線上にあるもの。
それは、便漏れ→皮膚炎症→皮膚荒れのループです。
こうなると、漏れトラブルからなかなか抜け出せなくなってしまいます。
それでなくても、ストーマ周囲の皮膚はパウチの取外しの摩擦で皮膚トラブルを起こしやすい場所だけに、ケアしづらく治りづらいのも弱点たる所以です。
皮膚のかぶれ・ただれの原因と対処方法
意外と知られていないのが、水様便のような下痢便はアルカリ性で消化酵素が大量に含まれているということ。
この消化酵素は、皮膚を強く刺激、皮膚のバリア機能を壊し、皮膚を著しく刺激します。
下痢のときに、お尻が痛くなるのはこのためです。
母が入院中によく見かけるのが、パウチから便がにじみ出ているのにその上からテープを貼って補強する看護師。
これでは、液便が皮膚に付着したままになり、あっという間に肌がただれてしまいます。
そして、退院後はなるべくして漏れトラブルにしばらく悩まされます。
従って、わずかでも便液がモレたら補強してその場しのぎをするのではなく、便をきれいにふき取り新しいパウチに取り替えるのが正解です。
予定外のパウチ交換は面倒以外の何ものでもありませんが、一旦、皮膚がただれるとなかなか治らないので、そうなる前の対策が重要になります。
ご家族がすぐに対応できない場合の対策は?
前述のように、漏れトラブルを防ぐには面板をしっかり密着させること。
たとえ、便が漏れても皮膚を保護するために速やかに対処することが大切です。
しかし、ご自身でストーマの管理ができない場合や、ご家族がすぐに対応できないときもあるかと思います。
現在、お世話になる訪問看護ステーションでどこまで対応できるか伺いました。
担当している患者さんの中には、ストーマ装具の交換など管理全般をフォローしている方もいるとのこと。
また、ご自身やご家族がストーマの管理に慣れるまでの期間限定でフォローしている方もいるそうです。
僕が、働いていたとき困っていた、対応できないときだけ緊急で対応してもらうことについても可能でした。
要相談になりますが、普段から訪問看護を利用していればかなり融通を利かせてくれる印象です。
もし、訪問看護を利用していない場合でも介護サービスでストーマの困りごとを解消できないかケアマネージャーに相談してみると良いでしょう。
かぶれ・ただれた時の処方薬
下記は、我が家で処方される塗り薬です。
- リンデロンローション
リンデロンローションは、ステロイドといわれる成分を含む医療用医薬品です。
ステロイドには皮膚の化膿や炎症をおさえる働きがあり、湿疹、皮膚炎、かゆみ、赤みなどの炎症を抑える効果があります。
- ケトコナゾールローション
脂漏性皮膚炎や水虫・カンジダ等による感染を治療する薬です。
リンデロンでは治まらない時に、ケトコナゾールが処方されています。
軟膏やクリームは、油成分が入っているためかシールの付きが悪くなるのでローションタイプが処方されています。
ローションタイプの塗り方は、指先に薬を少量落とし、患部に伸ばすようにしてやさしく塗るのがコツです。
大量に付着すると、パウチの付きが悪くなるので皮膚表面がテカる程度で良いと思います。
我が家の場合ですが、診察はパウチ交換の際にスマホで患部を撮って在宅医に診てもらっています。
経過が分かりやすくなるので、皮膚に異常を感じたら写真を撮っておくと良いでしょう。
おわりに
今回は、ストーマの方の漏れトラブルの原因と対策について解説いたしましたがいかがでしたか?
注意すべきは、排泄物に触れて炎症を引き起こすことから始まる負の連鎖に陥らないようにすること。
そのためには、ストーマの周囲の皮膚を清潔かつ健康な状態に保つことが大切です。
漏れの原因は上記だけではありませんが、これらを対策することで解消できることも多いと思います。
最後に、漏れトラブルで困ったときは、ストーマ外来や購入しているストーマ装具の販売店でも相談に乗ってくれると思うので問い合わせてみてください。
やはり、専門家に聞くのが一番早いです。