CVポート周辺の画像を載せています。 グロテスクな画像ではありませんが、やはりリアルです。 CVポートを検討されている方の中には、気分を害される方もおられるかもしれません。 傷あとなど気にされる方は、この記事を読まないでください。
母が、要介護になって10年が経過しようとしています。
CVポート歴=要介護歴なので、こちらもちょうど10年目です。
実は、今年3月と6月にCVポートの除去・留置手術をしています。
節目の年に、留置手術を2度も行なわなければいけなくなるとは・・・
いやはや、本当に何が起こるか分からないものですね。
今回は、CVポートのトラブル、特にポート感染についてこれまでの経過から解説しますので参考にしてみてください。
目次
最初に!この記事はCVポート肯定です。
今回は、デメリットばかりが目立つ内容となっていますが、CVポートを否定するものではありません。
そもそもポートのおかげで、母は在宅介護が可能になる前提があるだけに多少のデメリットは織り込み済みです。
以前の記事をなぞりますが、メリットをまとめておきます。
CVポートは、中心静脈栄養や抗がん剤の投与を目的に留置される点滴ルートです。
- 消化管が機能していなくても、水分・栄養の補給が可能
- 外出や入浴が可能
- 穿刺する回数が少なくて済む。1回で確実に針を刺すことができる
- 刺激の強い薬剤を使用しても、静脈炎を起こす可能性が低い
- 年余にわたって長期間使用可能
在宅療養が可能になること以外にも、
母のような短腸症候群で消化吸収機能が極端に低い人や、血管の細い人にとって1回で確実に針を刺すことができるのも利点です。
また、CVポートを使用しないときは点滴ルートを取り外して、完全にカテーテル管理から解放されるため外出や入浴もできます。
身体に不自由がなければ、畑仕事をされている患者さんもおられるようなのでかなり自由度が高い印象です。
CVポートのメリット・デメリットについては、こちらの記事に詳しく解説しているのでご確認ください。
ポート感染とは?
ポート感染とは、主に挿入しているポートから病原体が体内に侵入して症状が出る感染症のことです。
感染ルートは、カテーテル挿入部以外にも他の部位から混入した病原体が、血中に混入、血流に乗って運ばれることもあります。
セプタムと呼ばれるポート本体や、静脈まで伸びているカテーテルは体内ではあくまでも異物です。
病原体が異物に付着しやすい性質から、カテーテルの表面に定着して感染源になりやすくなります。
病原体の種類は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などに分類されます。
その中で、在宅で注意すべきは細菌や真菌と言ったところでしょうか。
なぜなら、膚常在菌や穿刺する人の手指などから伝播した細菌が侵入して感染するケースが最も多いからです。
菌と言えば悪いイメージですが、人の皮膚には誰しも常在菌がいて、皮膚のバリア機能を保ち皮膚刺激から肌を守る菌もいます。
しかし、通常、無害である菌も体内に入るとやはり害。
カテーテルの表面に定着・増殖して、血管内で感染症を引き起こします。
ポート感染の症状と治療
ポート感染の症状は、局所感染と血流感染で異なります。
局所感染は、ポート本体やカテーテルなど体の一定の部分のみに感染が限定している状態です。
症状は、ポート周囲の発赤、硬結(こうけつ)、腫脹・疼痛(とうつう)などがあります。
対して、血流感染は病原体が血液中を流れ全身に広がっている状態です。
症状は、38度以上の高熱がでます。
ポート感染が厄介なのが、対処が遅れると敗血症など命に関わる事態を招く恐れがあること。
敗血症とは、血液の感染症で死につながる病です。
感染しているかどうかは、感染していると白血球が増多、CRPの数値が高くなるので血液検査で判別できます。
治療は、感染の原因となっている病原体を体内から排除する作業が行われます。
そのためには、ポートを除去して感染源を絶たなければなりません。
母も、4回のポートトラブルのうち3回は血流感染が原因でCVポートを除去、新しいものに入れ替えしています。
ポート感染の入院期間は?
CVポートの留置は、30~40分程度の簡単な手術です。
なので、単にポートの設置だけなら日帰りもしくは一泊二日で退院することも可能でしょう。
しかし、感染が原因だと事情が変わってきます。
下記は、母の過去4度のデバイス除去の原因と入院期間です。
右上腕: ポート感染 入院期間 約40日
右前胸部:ポート感染 約半年間
左前胸部:ポート感染 19日間(今年3月)
左上腕: 皮膚欠損 5日間(今年6月)
最初の2つは、異なる病気で入院が長引いてしまいました。
1番目は、入院中に誤嚥性肺炎になったため。
2番目は、大腿骨骨折による入院中に術後感染症を引き起こしたため。
3番目だけが、純粋にポート感染だけの入院です。
このとき行われたことは、ポート除去と再設置。
感染が理由でポートの除去を行うときは、輸液ラインをすべて除去することが原則です。
除去後、すぐには再設置せず、しばらく入院して様子を見ることになります。
病原体が潜伏していると、感染をぶり返す可能性があるからです。
あとは患者の健康状態を見ながら、ポートを再設置して退院する流れになります。
母は19日かかりましたが、人によっては1週間程度で退院できそうです。
皮膚欠損(カテーテルの露出)のトラブルについて
4番目は、感染ではなく皮膚トラブルで留置場所を変えています。
そのトラブルとは、左腕に留置していたポート本体から静脈につながるカテーテルの露出です。
本来、カテーテルは皮下に埋め込まれているものです。
少し前から、この場所にかさぶたがあることに気付いていたのですが、それが剥がれてカテーテルが出てくるとは思いもしませんでした。
主治医からは、褥瘡(じょくそう)ができやすい皮膚が弱い人がなりやすいとのこと。
カテーテルによる内側からの圧力で、表面に押し出されてしまったのだろうということでした。
確かに、母の腕は細く皮膚は見たからに脆弱です。
レアケースかもとも思ったのですが、高齢者は皮膚の弱い人も多いと思うので普通にあり得るケースかもしれないですね。
結局、3月に入れたばかりのポートを除去して左鎖骨下に場所を変えています。
今回は、単にポートの場所を変えただけなので、除去と再設置を合わせても1時間に満たない手術でした。
母は、大事をとって5日入院しましたが、日帰りもしくは一泊二日で可能だと思います。
ポートを除去しても感染が治まらなかったケース
通常、ポートを除去すれば感染は治まるようです。
母も、3回の感染のうち1番目と3番目はポートを除去することで治まっています。
問題は、2番目の大腿骨骨折による術後感染症。
他の2例同様、ポートは早々に除去されたのですが・・・
それでは、熱は下がらなかったので点滴の抗菌薬治療が行われています。
それでも38度以上の高熱が2か月ほど続き、このときが一番大変でした。
大腿骨にボルトを入れる手術しているので、おそらくその部分に病原体が入って増殖したのだと思われます。
感染が治まらなかった理由は、2つが考えられます。
●ボルトを除去できなかったこと。
●そもそも、術後感染症は感染が治まりにくいうえに体力が低下していたこと。
ボルトが感染源の可能性が高かっただけに、再手術して除去できなかったのが痛かったです。
加えて、術後の経過も芳しくなく、著しく衰弱してしまったことも災いしているようでした。
まあ、弱り目に祟り目です。
ちなみに、病原体が体に侵入しても、かならずしも症状が現れる訳ではありません。
感染症となるかどうかは、病原体の感染力と体の抵抗力で決まります。
従って、高齢者や病気で抵抗力が落ちている人は感染症になりやすいと考えて良いでしょう。
おわりに
今回は、CVポートの留置場所を4度変えた経験から感染について解説しましたがいかがでしたか?
CVポートの取り扱いで重要なこと。
感染がデバイス抜去の最大の理由となっている点で、適切な感染管理をすることに尽きます。
また、日頃から検温やポート周辺の皮膚の観察をして、異変があればできるだけ早く病院につなげることも大切かと。
初動が早ければ、それだけ入院期間も短く済みます。
CVポートは、在宅復帰のメリットがある反面、感染リスクというデメリットがあるのでしっかり把握して手洗いや消毒など衛生面の対策しておきましょう。