ネットの書き込みで、「わずか2週間で寝たきりに」というお題の投稿を見かけました。
それまでは、歩行をしていた89歳の祖母が、わずか2週間の入院を機に寝たきりになってしまい納得がいかないというのです。
投稿者は、「おばあちゃんも年ですし、仕方ない」という病院側の姿勢に憤慨されているご様子で、この先の祖母の生活を思うとやりきれないとありました。
世間の大半の方は、ひどい病院だと投稿者に同情されるかもしれませんが、実は、このようなことは、運が悪かったのではなく日常的に起っています。
残酷ですが、ある意味必然です。
それを裏付けるかのように、このサイトでは、通常、たくさんのコメントが寄せられるのですが、この件に対してはコメントも少なく内容も短いものばかりでした。
投稿者と読者で、これだけ温度差があるのも珍しいと感じながらも、当事者からすればもちろん切実です。
この種の問題は、経験があるか否かで、捉え方が全く異なってくるのだと思います。
実際にこのような状況に直面しそうになったとき、後悔しないためにも、ある程度の知識を持っておくことは必要です。
2つの真逆の見解とは
投稿者の親は、小さな町だしうわさがうわさを呼ぶから、ことを大きくするなと言われているようですが、思ってもみない現実に納得できず、病院に対して怒りがおさまらないようです。
しかし、この投稿を読まれた人は、医療従事者・介護経験者とそれ以外の人で、真逆の見解に分かれるのではないでしょうか。
片方は「そうなったのは病院のせいで、ひどい病院だ」と投稿者側に賛同される人、もう片方は病院側の発言と同じく「年だから仕方がない」の2つです。
僕も介護経験者なので、後者です。
ニュアンスは、少し違いますが、端的に言うとそうなります。
おそらく、このサイトにコメントされる住人は、医療従事者や介護経験者など、ある程度医療や介護の現場を知る層だと思います。
そのため、コメントが少なかったのは、投稿者の認識不足によるもので、回答するに値しないと思われたのではないでしょうか。
寄せたれたクールなコメントの内容に投稿者は驚いているはず
数少ないコメントの中には、下記のような内容が含まれていました。


お年寄りは小さなことでもガクッと体力落ちるから、89歳、2週間、仕方ないんじゃないの。
納得しないのは、あなたのエゴでしょ。
または、

2週間寝たきりでいると、約36%の筋力低下が起ります。
89歳という年齢を考えれば歩けなくなる可能性はありますね。ただし2ヵ月程度の継続リハビリで筋力が戻る可能性もあります。病気や骨折でないのであればリハビリができるところはありませんか?
このように、病院側の非を問うような内容は、一つもありませんでした。
むしろ、投稿者に現実を受け止めた上で、これからどうするかが大切だと言わんばかりの内容です。
認識の大きな隔たりは、投稿者が現場を知らないだけ
僕は、連ドラマをあまり観ません。
漫画だと感情移入できるのですが、ドラマだとなぜか感情移入ができないからです。
おそらく、ちゃんと最後まで観たのは、さかのぼること東京ラブストーリーまでいきそう(笑)
しかし、会社を辞めた頃からここ1年半のあいだに、コードブルーとドクターXの医療系ドラマを2本観ました。
コードブルーは1分1秒を争うような緊急医療、一方ドクターXは超難しいオペをする大病院の高度医療。どちらも内容を面白くするために、かなり盛っているように感じましたが、病気を全力で治すという点では、どの病院にも共通していると言えるでしょう。
ドラマは、面白かったのですが、世間一般の病院のイメージが、この辺りにあるのだとすると、誤解も生まれるはずです。
患者の怪我や病気が、治るか治らないか、死ぬか助かるか2択で分かりやすく、後味がスッキリしすぎるからです。
病気の治療はできたけれど、退院する頃には、寝たきりになっていた!?
そんなドロな結末だと、誰も観ませんし・・
病院側に非がないけれど、認識の隔たりの原因は説明不足であるところが大きい
病気は治療したのに、寝たきり・認知症・老人性うつになってしまった!
退院時の本末転倒の状況に、患者の家族は驚き、この先のことを悲嘆するに違いありません。
しかし、高齢者が何もできずに、2週間ベッドでひたすら寝るしかなかったのが原因だとすると、それは病院に責任があるのでしょうか?
病気の治療、食事、トイレの補助など、患者が生きるための必要な処置はやっているので、病院に責任は問えないと思います。
ただ、僕が一つ医師に苦言があるのは、説明不足が悲劇を招くのだと言いたい。
医師が、高齢者の入院リスクを一言付け加えるだけで、防げることは多いはずです。
特に高齢者の入院は、入院の原因となる病気以上に、環境の変化による身体や心理的ストレスの影響に注意を払わなければなりません。
このことは僕が長年、嫌というほど思い知ったことです。
医師は、入院を機に寝たきりや認知症が加速する可能性が高くなる事実を告げたうえで、防止する対策を家族と一緒になって話し合うことが重要だと思います。
病院の出来ること、出来ないことをはっきり家族に伝えて、散歩や話し相手など入院中、病院が出来ない部分は家族の協力を要請する。家族に事前に通達しておけば、たとえ結果を変えられなかったとしても、退院時のトラブルは減るのではないでしょうか?
その説明がないと、家族は入院中の2週間、病院に任せておけば安心だと、ほとんどの人は普通そう思います。
僕の知る入院病棟の現場
ある程度動ける人は、看護師や患者同士でコミュニケーションを取って上手く入院生活していけるのですが、声に出せないで弱っている人は、言い方が悪いですが放置されて取り残されてしまいます。
看護師も忙しくしているので、声の大きい人から対処していけば、そのつもりはなくても手薄になっていくのが実情です。
その結果、動けない人は、構ってもらえずより弱っていきます。
あくまでも、僕の感想なので語弊があればすいません。
そうでない病院もあるかもしれませんが、僕が見てきた病院はそうでした。
病院でなくても、どの世界でもこの原理は当てはまりやすいと思います。
入院を機に寝たきりや認知症が進行しないようにするために/まとめ
結局、母が大腿骨を骨折して、半分寝たきりになりましたが、長年にわたりこのテーマと戦ってきました。そして現在も継続しています。
僕のつたない経験ですが、心がけていることは
できるだけ入院は避ける!
やむを得ず入院しても、できるだけ早く退院するようにする。
できるだけ長い時間付き添う。
これに尽きます。
とは言え、一旦入院してしまえば、会社勤めだった頃の僕には平日はどうすることもできません。
嫌がる父を、たとえ1時間でも毎日行って、話し相手になるように説得するのが関の山です。
「念のために入院させる」なんて、個室で家族が付き添えるぐらいの覚悟があれば別ですが、高齢者に限ればとんでもないリスクです。
寝たきりになって、この先どれだけ続くか分からない介護生活を送ることを考えると、入院期間はたかだか数週間です。
たった2週間で後悔しないためにも、高齢者の入院はご家族が連携して見守ってあげることが寝たきり防止につながると思います。
段階的に、ADL等が落ちることは少ない。
落ちるときは、一気に落ちてしまうことが多々あります。
要介護認定など受けていない者が、2週間程度の入院でも要介護4とか5と言うのは、よくあること。