日々、介護をされているみなさん、お疲れ様です。
今回は、在宅介護の負担を軽減できる制度をまとめました。
制度は、ややこしいイメージが付きまといますが、国や自治体など、どこから支援されるのかを整理することで要件がより把握しやすくなると思います。
公的な支援制度と介護サービスを組み合わせて活用することで、在宅介護をより継続しやすくなるかと思うので参考にしてみてください。
目次
介護保険による助成制度
介護費用を軽減する「高額介護サービス費」
高額介護サービス費とは、介護保険サービス費の自己負担額が限度額を超えた場合に、申請すれば超えた分の費用が還付される制度です。
対象者:要介護・要支援の認定を受けた方
支給対象となるサービス:「居宅サービス」「介護施設サービス」「地域密着型サービス」
対象外のサービス:「福祉用具購入費」「住宅改修費」「施設サービスの食費」「居住費や日常生活費」「支給限度額を超えた利用者負担分」
申請方法:市区町村の介護保険課
申請期限:介護サービスを利用した翌月を初日に2年以内
この制度は、自己負担が重くなり過ぎないようにするため、所得に応じて1か月の上限額を設定しています。
自己負担額とは、介護サービスを利用したときに支払う1~3割の利用者負担額のこと。
この1か月の合計額が、限度額を超えた場合に支給されます。
医療と介護費用の負担軽減に「高額介護合算療養費制度」
高額介護合算療養費制度とは、1年間の医療保険と介護保険の自己負担の合算額が著しく高額であった場合に自己負担額を軽減する制度です。
「高額療養費」「高額介護サービス費」を利用してもなお、一定の額を超えている場合に負担を軽減します。
対象者:医療と介護の両方を利用している世帯
1年間(8月1日〜翌年7月31日)の医療・介護費の合計が限度額を超えた世帯
申請窓口:国民健康保険に加入している人は、市区町村の介護保険課
被用者保険に加入している人は、被用者保険
申請期限:基準日の7月31日の翌日を起算日として2年以内
「高額療養費」や「高額介護サービス費」の対象にならない費用は、この合算制度でも対象外です。
高額医療・高額介護合算療養費は、自己負担額の比率に合わせて医療保険と介護保険から振り込まれます。
レンタルできない福祉用具の購入に「福祉用具購入費」
介護保険での福祉用具は、レンタルが基本です。
しかし、使用により劣化するもの、他人が使用したものを利用するのに抵抗が伴うものには福祉用具を購入する補助金が支給されます。
対象となるもの:ポータブルトイレ、入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト、移動用リフトのつり具の部分等
対象者:介護認定を受けた人、要支援可
費用:所得の負担割合に応じてその費用の7~9割分を支給
支給限度額:4月から翌年3月の1年間で10万円まで
申請窓口:まずは、ケアマネジャーに相談
我が家もこの制度を利用して、過去に入浴補助用具を1割負担で購入しています。

介護のために住宅改修するなら「居宅介護住宅改修費」
居宅介護住宅改修費とは、介護のために住宅改修する際にかかった費用の一部負担する制度です。
対象となるもの:手すり設置、段差の解消、床材の変更・滑り止め設置など
対象者:介護認定を受けた人、要支援可
支給限度額:20万円
所得の負担割合に応じてその費用の7~9割分を介護保険から支給
支給限度額:改修にかかった費用のうち、支給申請できるのは20万円まで
申請方法:介護保険による住宅改修費の助成制度なので、まずはケアマネジャーに相談
仮に、20万円未満の工事で済んだ場合は残額分で今後の改修費用に充てることができます。
我が家は、この助成制度を利用してトイレとお風呂場に手すりを取り付けていただいています。


母が、寝たきりになるまでの4年程ですが、徐々に足がおぼつかなくなっていたのでとても助かりました。
市区町村の高齢者福祉事業
一人暮らし、寝たきりの高齢者がおられるご家庭、日常生活を営むのに支障のある高齢者は、必要に応じて下記の支援が受けられます。
知っておきたいことは、これらは各自治体による独自の助成であること。
そのため、事業名、申請窓口、要件がまちまちです。
自治体の財務が反映するので、事業そのものが無かったりします。
下記は、奈良市をモデルに、記載がなければ奈良県内の他の自治体を例に解説していますので、気になる福祉事業があればお住いの市区町村福祉課に問い合わせてください。
親がトイレに行けなくなったら「紙おむつ等支給事業」
「紙おむつの支給事業」は、在宅で紙おむつを必要とする高齢者を対象に紙おむつを支給する事業です。
対象者:65歳以上(要介護認定されている65歳未満の方含む)
奈良市内に住所を有し、かつ在宅で生活している方
要介護4以上の方
本人が市民税非課税及び、同居者全員(世帯分離も含む)が市民税所得割非課税の方。
病院に入院中は不可
支給方法:2か月ごとに現物配達
支給限度額:1か月3.500円(現物支給)
申請窓口:市役所保健福祉課
草引きなど軽度な援助が必要なときは「軽度生活援助事業」
軽度生活援助事業とは、日常生活上援助を必要としている高齢者に、軽易な日常生活上の援助を自治体が行う事業です。
対象者:65歳以上の一人暮らしまたは高齢者のみの世帯で、心身状況等により日常生活上援助が必要な人。
内容:1年に4回を上限として、草引きなど軽度な生活の援助を行う
介護保険法のサービス対象とならないもの
一月につき1回まで、1回4時間が上限
利用料:1時間300円
申請窓口:地域包括ケア推進課 高齢支援係
在宅サービスを利用していないご家庭向け「家族介護慰労金」
この制度は、要介護4以上の人を介護サービスを利用せずに面倒を見る同居家族が対象です。
家族介護慰労金は、住んでいる自治体より、およそ年額約10万円が支給されます。
対象者:次のすべての要件を満たすご家庭
- 1年間、継続して本市に住所を有していること
- 要介護4~5の認定を受け、1年間その状態が継続していること
- 1年間、介護保険サービスを受けていないこと(7日以内のショートステイを除く)
- 要介護者及び介護者の属する世帯員すべてが市民税非課税であること
- 要介護者及び介護者の属する世帯が、介護保険料及び国民健康保険税を滞納していないこと
- 介護者が、生活保護を受給していないこと
- 要介護者が、1年間のうち、合計で3ヶ月以上入院していないこと
申請窓口:長寿介護課
申請日から遡って1年間、継続して要件を満たしている必要があります。
在宅介護は、家族だけで世話をするのは負担が大きいため介護保険サービスを利用して負担を軽減するのが定石です。
要介護4以上の親を、ご家族だけで世話をしているご家庭がはたしてどれだけあるのか!?
この制度そのものに疑問が残るのですが、参考までに。
一人暮らしで見守りが必要な人に「食の自立支援事業(弁当)」
配食サービスを実施する事業です。
配食の折に、安否確認を行います。
対象者:以下のすべてに当てはまる人
- 65歳以上の人で、一人暮らしの人など
- 障がいや病気等の理由で食事の用意が難しい人
- ケアプランで、配食サービスの利用が必要となっている人
- 見守りが必要な人
安否確認を兼ねた事業のため次の場合は利用できません。
- 昼間独居(家族と同居しているが、昼間はひとり暮らしの方)
- デイサービスを利用している日
- 配達時間帯に他サービスを利用しており、見守り又は食事の用意ができる場合など
費用負担:1食450円
利用回数:最大週7回
申請窓口:長寿福祉課
寝たきりで美容院に行けなくなったら「訪問理美容サービス事業」
理美容師が、ご自宅に訪問して散髪を行ってくれるサービスです。
対象者:在宅で65歳以上の方
心身の障がいや傷病等のために、理美容所へ出向くことが困難な方
ケアプランまたは介護予防プランにおいて、当事業の利用が必要であるとされている方
利用回数:年6回まで(2ヶ月に1回程度)
費用:1回 2,000円
申請窓口:長寿福祉課
一人暮らしの方がいざと言うときのための「緊急通報システム事業」
緊急通報システム事業とは、利用者に緊急事態が発生した時に、あらかじめ組織された地域支援体制により迅速な対応を行う事業です。
具体的には、緊急時に看護師や相談員が状況を確認し、協力員等の支援を依頼したり、救急車の出動要請などを行います。
対象者:おおむね65歳以上の高齢者、または身体障害者で下記項目をすべて該当している方
- 緊急性の高い疾患を持っている方
- ひとり暮らしの方または身体障害者等のみの世帯に属し、世帯員全てが緊急性の高い疾患をお持ちの方
内容:利用者には、緊急通報装置(機器本体とペンダント)を貸与。
費用:月額500円
申請窓口:健康福祉課
認知症の方が住み慣れた自宅で生活するために「認知症ホットライン」
各自治体に、認知症に関する相談機関が設置されています。
内容:認知症や若年性認知症に関する知識や介護の仕方、介護のグチや悩み等なんでも相談可。
場所:奈良市市役所
日時:毎週月曜日(年末年始・祝日を除く)午前10時~午後3時
窓口:福祉政策課
奈良市は市役所に出向いての対面形式ですが、自治体によっては電話相談や大阪市は対策を練るべく専門家チームが家庭訪問をして支援してくれるところもあり様々です。
認知症高齢者の見守りに「認知症高齢者位置情報探索事業」
行方不明となる心配のある認知症の人を介護する家族等に対し、位置情報探索機器を貸与して保護を容易にすることにより、介護する家族等の負担を軽減する事業です。
居場所を検索・特定し、より早期発見につなげ事故の防止を図ります。
対象者:市内に住民票があるおおむね40歳以上の在宅で生活されている方で、認知症などではいかいにより行方不明となる可能性がある方
費用:月額1.300円
申請窓口:長寿介護課
雇用保険から支給される制度
介護が理由で休職したいときは「介護休業給付金」
介護休業給付金とは、家族の介護のために休職したときに雇用保険から最大67%が支給される制度 です。
「親の介護で休職したいけど、収入の問題が・・・」
そんな問題を抱えている方のために、この制度があります。 申請期間:介護休業を終えた次の日から2か月末まで 給付期間:同一の対象家族につき 93 日 93日間を、3回を上限に分割して取得することも可能 申請窓口:ハローワーク
介護休業とは、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある家族の介護をするための休暇です。
介護休業を取得できる人は、正社員だけではなく、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員も対象となります。
また、介護休業開始予定日から93日経過したあと、6ヶ月以内に労働契約期間が満了することが決まっていない人が条件です。
注意点は、申請が介護休業を終えてからになるので介護休業中に受給できないこと。
要件を満たしているか知りたい方は、一度ハローワークに確認してみるとよいでしょう。
医療保険による助成制度
医療用装具を購入したときは「治療用装具療養費」
申請により負担割合に応じて給付が受けられます。
対象物:医師が必要と認めたギプスやコルセットなど
支給額:治療用装具の代金として支払った額の9割、8割又は7割
申請窓口:医療保険制度の給付対象になるので、国民健康保険なら役所の国民健康保険課に。
組合健康保険なら、その健康組合に申請してください。
申請時期:治療用装具の費用を支払った日の翌日から2年以内
母が、右腕を骨折したとき利用しています。
確か3万円ほどでしたが、申請後に9割が戻ってきました。
国から支給される手当
月額27.350円受け取れる「特別障害者手当」
特別障害者手当は、常時の介護を必要とする人を対象に国から支給される手当です。
重度の障害による精神的・経済的な負担の軽減を目的としています。
対象者:日常生活において常時の介護を必要とする状態にある20歳以上の在宅の方
支給額:月額27.370円
申請窓口:市区町村の生涯福祉課
特別障害者手当は、「障害者」という名称がつくため見落としがちな給付制度ですが、障害者手帳を取得していなくても可能です。
具体的な条件や申請方法は、こちらの記事に記載しているのでご覧ください。
税金の控除
在宅サービスでも対象になる「医療費控除」
医療費控除とは、1年間の医療費が多くなったときに税金を減らしてくれる所得控除制度の1つです。
対象:
- 納税者本人や、納税者と生計を一緒にする家族に支払った医療費
- 1年間にかかった医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超えた場合
対象期間:その年の1月1日から12月31日の間に支払われたもの
申請窓口:税務署
有効期間:医療費を支払った年の翌年1月1日から5年以内
要介護認定でも受けられる「障害者控除」
要介護認定でも「障害者控除」が適用されるケースがあります。
対象税目:所得税
対象者:障害者手帳を取得されている納税者本人、もしくは同一生計配偶者または扶養家族
申請方法:「障害者控除対象者認定書」を年末調整や確定申告時に提示
障害者控除は、適用されると控除額が大きいのでぜひ確認してください。
おわりに
今回は、在宅介護を支援する制度をまとめましたがいかがでしたか?
長年、介護をしてきて思うこと。
介護費用の負担軽減には、情報収集が不可欠だということ。
これらの制度を利用するには、利用者が調べて申請しなければならず、知らないと分からずじまいになってしまいがちです。
僕も、働いていた頃に利用したのは、ケアマネジャーに勧められた「福祉用具購入費」と「居宅介護住宅改修費」の2つだけ。
もう少し早く知っていたら、介護と仕事を両立しやすくなるほか、経済的不安を和らげることができたのではないかという思いがあります。
おそらく、高齢者にとってもかなりハードルが高いかと。
多くの人は、自力で活用するのは困難だと思います。
僕ら子供世代が、親に代わって情報収集、活用して負担軽減につなげましょう。